Re: [情報] 田口壯的冠軍感想
http://www.major.jp/news/news20061028-18214.html
田口が抱く優勝リングへの想い
by 丹羽政善
優勝が決まった瞬間、田口壮は、雨に濡れた芝を蹴った。
セカンドベース付近では、すでに歓喜の輪ができている。こんなと
き、外野手は不利だ。彼が横目でセンターのジム・エドモンズを見
ると、彼は田口よりも速かった。
記者らも、急いでクラブハウスに向かう。しかし、日本のメディア
にあてがわれた席は、ライトのポール裏。ネット裏までは、ずいぶん
と距離を感じた。
途中、小さな子供連れの夫婦が、途方に暮れていた。３才ぐらいの
女の子が、恐れおののき、泣いている。
優勝した瞬間、スタンドには怒号と悲鳴が交錯。その声に驚いたの
だ。同時に、外野の外では花火が上がる。その音にも驚いたようだが
、カージナルスはそのとき、すべてのゲートを開け放ち、チケットを
手に入れられず球場の外にいたおよそ１万人のファンをスタジアムに
招き入れた。そのスペインの牛追いのような人の波が、押し寄せる。
小さな子には、恐怖に映っただろう。
まだ、人もまばらなインタビュールームにたどり?くと、テレビで
は表彰式の模様を映し出していた。
同じ頃、タイガースのジム・リーランド監督が部屋にやって来る。
記者はまだ、１０人ほどしかいない。多くの記者は会見に間に合わな
かったのだ。
淡々と、３つの質問に答えただけで退席したリーランドの足元を見
ると、靴を履いていない。それだけが目に焼き付いている。
カージナルスのクラブハウスに入ると、すでにシャンパンファイト
が始まっていた。飛沫が、入り口付近まで飛んでいる。
選手の周りを多くのメディアが囲み、肝心の選手が見えない。田口
の姿は、遥か奥にあったようだ。
しかし田口は、中座して取材に?えてくれた。
----最後、グラウンドにいたことは、どんな意味を持ったか。
「大きいですね。大きな意味を持ちました」
----２年前にワールドシリーズ４連敗を喫したことは、今回のシリーズ
で生きたか。「それも含めてです。高校、大学、プロ、そこで経験したす
べてのことが、このシリーズで生きたと思います」
田口の全身から、シャンパンの匂いがする。おそらく、帽子、アンダ
ーシャツ、パンツ、ソックス。すべてを絞れば、シャンパン１本分には
なったはずである。
シャンパンファイトに復帰した田口と入れ替わりで、同じ控えとして
活躍したスコット・スピージオが中央の輪から外れてきた。
顔見知りの記者と見ると、頭からシャンパンをかける。
同じ被害を警戒しつつ、「おめでとう」と声をかければ、「シアトル
を出てよかったよ」。
今度は、クラブハウス前の廊下で、田口は日本人メディアに囲まれた。
「正直、パドレスに３連敗するかと思った」という彼は、「信じられな
い」を連発する。
「ワールドシリーズに出られると思わなかった。メッツに４連敗しても
おかしくなかった」
自身のプレーを振り返れば、納得した表情を見せる。
「いい仕事ができたのだなと、思っている。打ったり、守ったり、小技
だったり、これからの野球に自信になると思う。もっと野球がうまくな
れるんじゃないかというふうにも思った」
日本に帰ったら、故仰木彬監督のお墓参りに行きたいという。
「仰木さんには、亡くなる１週間前にお見舞いに行って、ナ・リーグの
チャンピオンリングを見せた。仰木さんが、『もう一つ上を見せてくれ』
と言ったのを覚えている。だから、しっかりと、墓前に報告したい」
中では、まだシャンパンファイトが?いていた。田口は、少し尻込みした。
「３７歳のおっさんにはきついから（笑）」
それから彼は、濡れたアンダーシャツのままで、グラウンドに出た。客
席から、「ＳＯ」コールが起こる。彼は、深々と一礼した。
街では、まだまだ奇?が聞こえているはず。
エンドレスナイトは、始まったばかりだ。
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